飲食店の消防計画の作り方【開業者向け】

飲食店を開業するとき、消防計画の作成と届出は避けて通れない手続きのひとつです。
この記事では、防火管理者の選任義務が生じる収容人員の基準・消防計画の作成手順・訓練の実施回数・変更届のタイミングを、法令根拠とともわかりやすく説明します。

この記事でわかること

  • 飲食店で防火管理者の選任が必要になる収容人員の目安
  • 消防計画に盛り込む項目と届出の流れ
  • 消火・避難訓練の実施回数と消防機関への通報義務
  • 消防計画を変更すべきタイミング
  • 罰則の仕組みと二段階構造

消防計画全体の概要は消防計画 完全ガイドもあわせてご覧ください。


1. まず確認:飲食店は「特定用途」に該当します

消防法施行令の別表第一では、不特定多数の人が出入りする施設を「特定用途」と分類しています。飲食店(料理店・レストラン・カフェ等)は同表1〜4項・5項イ・6項イハニ・9項イ等に掲げる特定用途に含まれます。

この分類が重要なのは、防火管理者の選任義務が生じる収容人員の閾値が用途によって異なるからです。


2. 防火管理者の選任が必要な収容人員

消防法施行令第1条の2第3項の規定により、用途ごとの選任義務は次のとおりです。

用途の区分選任が必要な収容人員
避難困難者入所福祉施設等(令別表第一6項ロ・16項イ等)10人以上
特定用途(同表1〜4項・5項イ・6項イハニ・9項イ等)30人以上
非特定用途(同表5項ロ・7〜15項・16項ロ・17項等)50人以上

飲食店は特定用途に該当するため、収容人員が30人以上になると防火管理者の選任が義務付けられます。

収容人員の数え方に注意
収容人員は「客席の座席数+従業員数」で算定するのが基本ですが、立席スペースや厨房スタッフの人数の扱いは所轄消防署の運用によって異なる場合があります。開業前に所轄消防署へ確認することをお勧めします。


3. 消防計画とは何か

消防計画は、火災その他の災害が発生した場合に被害を最小限にとどめるための行動計画です。消防法第8条および施行令第3条の2の規定により、防火管理者が作成し、所轄消防署長等へ届け出ることが求められています。

消防計画には一般的に次の内容を盛り込みます(所轄消防署の様式・指導内容により異なる場合があります)。

  • 防火管理者の氏名・権限
  • 火気管理の方法(厨房設備・喫煙場所等)
  • 消防用設備等の点検・整備の方法
  • 避難経路・避難誘導の方法
  • 消火・通報・避難訓練の実施計画
  • 地震・風水害等への対応方針
  • 自衛消防組織の編成(規模によって異なります)

飲食店特有の注意点として、厨房の火気設備(グリル・フライヤー・ガスレンジ等)の管理手順深夜営業時の人員体制を具体的に記載することが重要です。所轄消防署によっては、厨房設備の配置図の添付を求める場合もあります。


4. 消防計画の作成・届出の手順

ステップ1:防火管理者を選任する

防火管理者は、消防法令に定める資格(甲種または乙種防火管理者講習の修了等)を持つ人を選任します。選任後は選任・解任の届出を所轄消防署長等へ行う義務があります(消防法第8条第2項)。

罰則の注意点
防火管理者の選任・解任の届出を怠ること自体が、消防法第44条第8号により30万円以下の罰金または拘留の対象となります。

ステップ2:消防計画を作成する

防火管理者が中心となり、所轄消防署の様式や指導に沿って消防計画を作成します。様式は消防署の窓口またはウェブサイトで入手できる場合が多いですが、様式の書式・記載項目は自治体・消防本部により異なります

ステップ3:所轄消防署長等へ届け出る

作成した消防計画を所轄消防署長等へ届け出ます(消防法施行令第3条の2)。届出の受付方法(窓口持参・郵送・電子申請等)は所轄消防署により異なりますので、事前に確認してください。


5. 消火・避難訓練の実施回数

消防法施行規則第3条第10項・第11項の規定により、飲食店のような令別表第一1〜4項・5項イ・6項・9項イ・16項イ等に掲げる防火対象物の防火管理者は、消火訓練および避難訓練を年2回以上実施しなければなりません

また、訓練を実施する前にはあらかじめ消防機関へ通報することが必要です。通報の方法(電話・書面等)や様式は自治体・消防本部により異なる場合があります。

想定例
客席30席・スタッフ5名の小規模飲食店の場合、年2回の訓練を「開店前の時間帯」と「閉店後の時間帯」に分けて実施し、それぞれ事前に所轄消防署へ通報するケースが考えられます。訓練の内容(消火器の使い方・避難経路の確認等)は消防計画に明記しておくと、当日の進行がスムーズになります。


6. 消防計画の変更届が必要なタイミング

消防法施行規則第3条は、消防計画を変更するときも届出が必要と定めています。ただし、法令上は「年◯回見直す」といった定期見直しの周期は規定されていません。変更届が必要になるのは、実態が変わったときです。

主な変更届の必要場面:

  • 防火管理者が交代したとき
  • 収容人員が大きく増減したとき(席数の変更・レイアウト変更等)
  • 厨房設備を大幅に変更したとき
  • 営業時間・営業形態が変わったとき
  • 建物の改修・増築を行ったとき

変更の都度、所轄消防署長等へ変更届を提出することが求められます。


7. 罰則の仕組み(二段階構造)

消防計画の作成・届出義務(消防法第8条第1項)そのものには直接の罰則はありません。罰則が適用されるのは次の二段階の流れを経た場合です。

  1. 所轄消防長等から是正命令(消防法第8条第3項)を受ける
  2. その命令に違反した場合に初めて、消防法第42条第1項第1号の6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象となる

一方、前述のとおり防火管理者の選任・解任の届出を怠ること自体は、命令を待たずに第44条第8号(30万円以下の罰金または拘留)の対象となります。

この二段階構造を理解した上で、「命令が来てから対応すればよい」という考え方は避け、開業時から適切に手続きを進めることをお勧めします。


8. トドケデ消防計画で作成をサポート

消防計画の作成は、防火管理者である事業者ご自身が行うものです。ただし、「何を書けばよいかわからない」「所轄消防署の様式に合わせて整理したい」という方には、**トドケデ消防計画(plan)**が作成をサポートします。

トドケデは、飲食店の現場条件(厨房設備・席数・営業形態等)に応じた消防計画の下書き作成を無料でご利用いただけます

▶ 無料で消防計画を作成する

なお、届出書類の作成代行が必要な場合は、提携行政書士が受任する形でご対応できます(別途費用が発生します)。書類を作成・提出する主体は提携行政書士となります。


まとめ:飲食店の消防計画 チェックリスト

  • 収容人員を算定し、30人以上なら防火管理者を選任する
  • 防火管理者の選任届を所轄消防署長等へ提出する
  • 防火管理者が消防計画を作成する
  • 消防計画を所轄消防署長等へ届け出る
  • 年2回以上の消火・避難訓練を計画し、事前に消防機関へ通報する
  • 設備・人員・営業形態が変わったら変更届を提出する

消防計画に関連する手続き全体については、消防計画 完全ガイドで詳しく解説しています。


著者:丸岡 峻
元京都市消防局13年・現役防災士(日本防災士機構認定)・消防設備士・危険物取扱者
著者プロフィールを見る


免責事項
この記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。消防計画の作成・届出にあたっては、所轄消防署または専門家へご確認ください。法令の内容は改正される場合があります。最新の情報はe-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/)および所轄消防署でご確認ください。